[写真] リーク(義父の裏庭より)
[写真] レンティル(市販)
[写真] スウィード(市販)
[写真] パースニップ(市販)
肉、魚、野菜などからとったダシ [stock] に具を入れて料理したスープをブロス [broth] という。シチュー [stew] のようにドロッとしたものではなく、日本風に言えば「あっさりした」スープである。
日本のお吸い物は clear soup などと訳されているが、たまに broth という訳も目にする。ブロスはお吸い物のもっと具だくさんなやつで、お吸い物のような上品なものではない。
味付けは基本的に塩とコショウのみ。好みでハーブを入れるのもよし。最後にパセリのみじん切りを散らしてもよし。
今回も話は義理の両親と同居時代に戻る。
西洋では鶏の丸焼きというのが一般家庭のごちそうと言えると思う。義理の両親の家でもそうだった。実は、私は鶏の丸焼き自体にはさほど魅力を感じていなかった。まずいかおいしいか、ときかれれば、おいしいのだと思うのだが、他にいろいろおいしいものを当たり前のように食べていた私にとっては特別に素晴らしいと思える食べ物ではなかった。鶏よりはポーク・チョップとかラム・チョップのほうがずっと楽しみだった。
でも、鶏の丸焼きが出てくるとワクワクしたものだ。鶏の丸焼きの翌日はチキン・ブロスというのが義理の両親の家の夕食のパターンだったから。私はそのチキン・ブロスに胸を膨らませ、鶏肉を食べつつも心はすでに翌日の夕食にとらわれていたのだ。
食べると胃にずっしり来ることの多いイギリスの食生活において、ブロスのようなあっさり系で野菜をたっぷりおいしく食べられる食事というのは貴重なのである。
鶏の丸焼きは、胸肉やモモ肉など、当り障りのない部分を初日に食べ尽くす。食事が終わったら、残骸を丸ごと鍋に放り込んでコトコト煮る。こうすれば骨からはいいダシが取れるし、食べにくかった部分の肉は骨からはがれてブロスの具になるのである。捨てるのはダシを取り尽くした鶏の骨だけである。
さらに私は鶏の軟骨も見逃さずに食べていた。ボリボリと音を立て、ときおり「七味が欲しい!」と叫びながら。私は食べることに熱中すると、我を忘れてしまうことが往々にしてある。私の友人の誰もが知っている私のよくない癖である。義理の両親も内心、この子はいったいどうなっているんだ、と思っていたに違いない。
※ 七味唐辛子は seven spices などと呼ばれているらしい。
次の日には残り野菜の残飯整理を行う。中途半端に残っている根菜類はとりあえず角切りにして鶏のスープの鍋に放り込む。具はケチケチしてはいけない。やや大きめに切ってどっさり入れよう。具はスープの浮き身なのではなく、ブロスの主役なのだ。
簡単に言うと、具には入れたいものを入れればいい。ただし、あっさり系に仕上げたいからイモ類は入れないほうが無難だろう。お決まりは、玉ねぎ、ニンジン、セロリ、グリーンピース [green peas]、などなど。
その他、イギリスならではの具を以下に列挙してみる。
一見、長ネギ。しかし長ネギのような歯ごたえがないし、味も微妙に違う。義父が栽培するリークは切り口がニラのような匂いがする(う〜ん、たまらん)。塩とコショウだけでさっと炒めて食べるのも美味。
スープやシチューの具としてよく使われる豆。かわりにオートミールを使うこともある。
カブ [turnip] の仲間。大ぶりである(直径15センチくらい)。外側が紫がかっており、中身は黄色。スライスして生食もよし。
これもカブの仲間。形は日本の太いニンジンだが、色がクリーム色である。食感はカブそのものだが、味はにんじんの苦味をさらにもうちょっと強くした感じ。ローストしたものが日曜のお昼 [Sunday lunch] によく出る。セロリ嫌い、グリーンピース嫌いな人も、ブロスで挑戦してみていただきたい。意外と食べやすかったりするものである。
義理の両親の家で食べていたブロスには、いったい何種類の具が入ってるんだろう、と思うくらいたくさんの具が入っていた。具だくさんというのは幸せなことである。何杯もおかわりしてしまう。
義理の両親の家ではチキン・ブロスのほかにヴェジタリアン・ブロスも作ってもらっていた。玉ねぎを粗いみじん切りにして油でゆっくり炒めたのをダシとして使っていた。このダシを作っている最中はとてもいい匂いがする。動物性の旨みを知ってしまった人には物足りないかもしれないが、玉ねぎのダシでもなかなかいけるものである。
私は食べたことはないが、ハムやベーコンのブロスもあるようだ。
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